📋 この記事でわかること
訪問看護のオンコールとは?仕組みを理解する
オンコール(On-Call)とは、夜間・休日など通常勤務時間外に、利用者や家族からの緊急連絡に対応できる状態で待機することです。訪問看護では、利用者が自宅で24時間生活しているため、夜中に急変や不安が生じることが当然あります。そのセーフティネットを担うのがオンコール体制です。
訪問看護ステーションは、事業所の規模・スタッフ数・地域特性によってオンコール体制が大きく異なります。典型的な体制は以下の3パターンです。
🏠 当番制(小規模ST)
スタッフ全員が順番でオンコール当番を担う。人数が少ないほど1人あたりの頻度が高くなりやすい。
👥 ペア制・バックアップ制
メイン担当+サブ担当の2名体制。メインが対応困難な場合にサブが介入。負担が分散される。
🏢 専担チーム制(大規模ST)
緊急対応専門スタッフを設置するケース。大手チェーンでの採用例が増えている。
📱 電話対応専門型
夜間は電話対応のみで、訪問は緊急性の高いケースに限定するルール設定をしているST。
実際の出動頻度データ(厚労省・日看協調査)
「オンコール=毎晩出動」というイメージを持つ方が多いですが、実際のデータはそれほど過酷ではありません。
待機中の実際の対応
厚生労働省の調査によると、オンコール待機時に実際に出動が必要となったのは月0〜2回が74.9%を占めており、多くのケースでは電話対応だけで解決しています。
| 月の出動回数 | 割合(%) | 実態のコメント |
|---|---|---|
| 0〜2回 | 74.9% | 電話対応のみで完結するケースが大半 |
| 3〜5回 | 約15% | ターミナルケース対応が多い時期など |
| 6回以上 | 約10% | 重症利用者が多い・スタッフ不足のST |
一方で、日本看護協会の調査では、月のオンコール待機回数(担当日数)は「4回以下」「5〜9回」「10〜14回」の割合が多く、ステーションの規模とスタッフ数が1人あたりの担当回数を決める大きな要因となっています。
オンコール対応の実際:電話内容と緊急訪問のパターン
オンコールにかかってくる電話内容は大きく2種類あります。
① 電話対応のみで完結するケース(8割以上)
- 「熱が出てきたが様子を見てよいか」「頓服薬を使ってよいか」などの確認電話
- 転倒したが怪我はなさそう・体位交換の手伝いをしたい、など家族の不安解消
- ストーマ(人工肛門)の装具が剥がれた際の電話指導
- 精神疾患利用者の夜間不穏・不安電話(傾聴・指示で対応)
- 末期がん利用者の家族からの「どう対応すればよいか」相談
② 緊急訪問が必要なケース(実際の出動)
- SpO₂低下・呼吸状態悪化など急変サイン
- 転倒・骨折疑い(受診・救急搬送の判断)
- ターミナル期の看取り対応(看取りケア・死亡確認の立ち合い)
- ストーマや褥瘡(床ずれ)処置が緊急に必要な場合
- 精神疾患利用者の著しい興奮・自傷リスクがある場合
手当の相場:待機料・出動手当を比較
オンコール手当は大きく「待機手当(待機1回あたり)」と「出動手当(緊急訪問1回あたり)」に分かれます。
| 手当の種類 | 相場(1回あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 待機手当(平日) | 1,000〜3,000円 | 実際の電話/出動の有無に関わらず支給 |
| 待機手当(休日・深夜) | 2,000〜5,000円 | 休日加算があるSTは生活保護 |
| 緊急出動手当(電話対応後の訪問) | 3,000〜5,000円 | 全国訪問看護事業協会調査の平均 |
| 看取り対応加算 | 5,000〜10,000円 | 深夜看取り対応に別途支給するSTも |
全国訪問看護事業協会の最新調査(2025年度版)では、緊急訪問時の出動手当は5,000円以上の事業所が最も多く28.7%を占め、3,000〜4,000円が6.8%、4,000〜5,000円が13.9%でした。出動手当がまったくない(0円)事業所も一定数あるため、転職前の確認が必須です。
オンコールがきつい理由と、現場が取り組む負担軽減策
「きつい」と感じる主な理由
- 精神的緊張感が続く:担当日は常にスマートフォンを手放せず、飲酒もできない
- 睡眠が分断される:深夜・早朝の電話で睡眠が十分に取れない日がある
- 翌日も通常勤務がある:オンコール後も普通に日勤があるケースは消耗が大きい
- 一人で判断しなければならないプレッシャー:特に経験の浅い看護師には大きな負担
- 頻度がコントロールできない:人員不足のSTでは担当回数が増えやすい
先進的なSTが取り組む負担軽減策
オンコール明けの代休制度
実際に出動があった翌日は午前休・半日休を取得できる制度。出動がなくても担当日翌朝は遅出にするSTも増えています。
バックアップ体制の充実
オンコール担当1名に加え、管理者やベテランナースが「相談窓口」として控える二重体制。一人で抱え込まない仕組みが重要です。
オンコール外しの選択肢
子育て中・介護中・新人期間中などの看護師には、希望によりオンコールを免除または大幅に軽減する制度を設けているSTが増えています。
判断支援ツール・マニュアルの整備
症状別の対応フローや、主治医・管理者への連絡基準を明文化することで、深夜でも迷わず動ける体制をつくるSTが増えています。
手当の大幅改定
一部の先進的なSTでは平日6,000円・休日12,000円といった相場の2倍以上の手当を設定し、採用・定着率向上に成功しています。
転職前に確認すべきステーション選びのポイント
オンコール体制は求人票に詳細が書かれていないことが多く、面接・職場見学で直接確認することが重要です。
| 確認項目 | 理想的な答え | 注意が必要な答え |
|---|---|---|
| 月のオンコール担当回数 | 4〜6回以下 | 10回以上(人員不足の可能性) |
| 実際の出動頻度 | 月0〜2回程度 | 月5回以上(ターミナル多数・夜間独居多い) |
| オンコール明けの翌日 | 代休・遅出あり | 翌日も通常勤務(消耗大) |
| バックアップ体制 | 管理者が相談対応 | 一人でほぼ全対応 |
| オンコール手当(待機) | 2,000円以上/回 | 1,000円未満・または合算支給で不透明 |
| 子育て中のオンコール免除 | 希望に応じて免除制度あり | 全員一律で担当義務あり |
「オンコールは慣れれば大丈夫」「みんなやってる」といった曖昧な答えしか返ってこない場合は、体制の整備が不十分な可能性があります。転職エージェント経由で内部情報を入手するのが有効です。
経営者目線:オンコール体制が職場定着を左右する
訪問看護ステーションを経営する立場から正直にお伝えすると、オンコール体制の設計は、採用・定着のど真ん中の課題です。
看護師の転職理由の上位に常に「オンコールの負担」が入ります。逆に言えば、オンコール体制を丁寧に整備しているSTは、採用市場でも「選ばれるステーション」になれます。
私のステーションでは以下の取り組みを行っています:
- 出動があった翌日は必ず遅出(午前9時出勤可)に変更
- 待機手当は市場相場より高めに設定(月の総手当が明確にわかる給与設計)
- 管理者が夜間でもLINEで相談対応できる体制
- 症状別判断フローをスマートフォンで確認できるよう整備
- 新人看護師はオンコール担当開始まで6ヶ月以上の研修期間を設定
これらの取り組みは採用コスト・離職コストを大幅に下げます。「手当を少し上げる+翌日代休」だけで、離職率が半分近く下がった事例も経営者仲間の間では珍しくありません。
①実際の出動は月0〜2回が7割超で、多くは電話対応で完結する
②手当・体制はSTによって天と地の差があり、転職前の確認が必須
③良い体制のSTを選べば、オンコールは「きつい義務」ではなく「報われる専門業務」になる
転職を検討している方は、オンコール体制の詳細を転職エージェントに事前確認してもらうのが最も効率的です。求人票には書かれていない内部情報を入手できます。